別れさせ屋業務の違法性
ありとあらゆる手法を用いてターゲットと恋人を別れさせる別れさせ屋ですが、そもそも別れさせ屋の業務というのは合法なのでしょうか?
簡潔に言うと、別れさせ屋を経営すること自体は違法ではありません。
しかし、日本で唯一、調査業に関する社団法人である「日本調査業協会」は、別れさせ屋の業務を自主規制という形で禁じています。これによって、別れさせ屋の業務をしている業者はこの協会に参加することはできません。
このように、日本では別れさせ屋の業務は違法ではなくともグレーゾーンとして見られることが多いようです。
また、別れさせ屋自体は違法ではなくとも、別れさせ屋が用いる過激な手法のいくつかには違法性があることがあります。今回は、具体的にどんなことが違法になるのかについてお話します。
別れさせ屋の業務は、公序良俗に反する場合がある
別れさせ屋のもとに、旦那の浮気に悩んでいる妻から、「夫と浮気相手の女性を別れさせてほしい」という依頼があったとします。この際、別れさせ屋は魅力的な容姿をした女性の別れさせ工作員をターゲットの男性のもとに送り込むのですが、ここで、工作員が男性と性行為に及ぶのは、既婚者である男性が持っている貞操義務を積極的に破らせようとしているとして違法行為となってしまうことがあります。
よって、工作員を送ってのターゲットの男性へのアプローチは、あくまでも性的接触を要さないものでなければなりません。
しかし、これが恋人同士となると少し話が変わってきます。恋人同士の間には法的な貞操義務はないので、貞操義務を破らせようとしていることに対する違法性は生まれないかもしれません。
しかし、工作員の業務中の性行為は、そもそもが公序良俗に反しているという理由で違法行為とされてしまうケースが多いです。
2015年の11月9日に大阪地裁は、別れさせ屋と契約してお金を払った女性の、別れさせ屋の契約そのものが公序良俗に反しているので契約は無効であるという訴えに対して「別れさせ屋の契約は公序良俗に反していない」という判決を出しました。この際、公序良俗に反していない理由として、訴えられた別れさせ屋が、工作の過程で肉体関係をもつようなことをしていなかったことをあげています。実際の裁判でも、性的関係の有無が争点となるというわけです。
別れさせ屋の業務は、脅迫罪に引っかかる恐れがある
別れさせ屋のなかには、ターゲットの弱みを握ることによって別れさせようとする業者もいます。
例えば、妻の浮気に悩んでおり、浮気相手と別れさせてほしいという依頼が男性から来た場合、こういった別れさせ屋はまずこのターゲットの女性の身辺調査をしたり、過去の情報を探ります。例えば、逮捕歴はないが、過去に犯罪歴がある、また元カレが暴力団などの反社会的勢力であるなどです。
その調査の中で、依頼者の奥さんが隠したいであろう事実を手に入れたら、奥さんのもとにそれをもっていき、「この情報をばらされたくなかったら今すぐ浮気相手と別れてください」などと言って脅しをかけます。
これは明らかに脅迫罪に該当するもので、いかなる目的があろうとも違法行為となります。
別れさせ屋は、探偵業法に従わなければならない
別れさせ屋の業務のなかでは、ターゲットの尾行や張り込みが必要な場面が出てきます。この尾行や張り込みをするためには探偵業届け出を提出しなければならず、これを提出していない別れさせ屋は違法となります。
また、探偵業届け出を出した以上、その別れさせ屋は探偵業法に従わなければなりません。よって、通常の探偵事務所が負う、秘密の保持などの各種義務を果たさなければならないのです。
また、探偵業法では、名義貸しを禁止しています。よって、インターネット上のサイトに実際の経営者とは異なる名前や写真が掲載されている場合、違法行為となってしまいます。ただ、こういった名義貸しをしている業者はそもそも違法行為をしている詐欺グループである可能性が非常に高く、事務所を転々としているような会社の場合があります。
探偵業法の中には、探偵業者の業務において、個人の生活の平穏を害したり、個人の権利利益を侵害してはならないとする項目があります。もし別れさせ屋の業務が、このような項目に反すると判断された場合は、違法行為の対象となってしまうこともあるのです。
実際、全国30の都道府県の警察署は、探偵業法を用いて別れさせ屋の経営を規制することが可能だとしています。
別れさせ屋業務それ自体は違法ではなくとも、別れさせ屋という業務の性質上、他のビジネスよりも法律に触れる可能性が高いものであるといえるでしょう。だからこそ別れさせ屋を選ぶ際には、法律を順守している事務所を選ぶことが大切です。また、別れさせ屋に浮気調査や別れさせ工作依頼する前に、自分が抱えている問題を解決できる方法はないのかをまず考えてみるべきなのではないでしょうか。